RESEARCH
錯視を利用したプロジェクタの表現可能色域の拡張
プロジェクタの表現できる色は投影対象や環境光に依存するので,光学的に表現できる色には限界がある.一方で,人間が知覚する色と実際の色との間には差がある場合がある.例えば,夕焼けの中でも人は木の葉は緑と知覚することができるが、実際の色は夕焼けの橙色の光によって緑から茶色のような色に変化している.この現象は,色恒常性という働きであり,錯視の一種である.我々はこの色恒常性をプロジェクタの光投影によって誘発し,人の知覚する色に基づいて制御することで,プロジェクタの表現できる色域を知覚的に拡張することを目的とする.
左の画像は,IEEE VR 2018でポスター発表を行った際に使用したポスターです.
プロジェクタカメラ系による見かけ制御のための環境光変化にロバストな反射率推定
プロジェクタを照明のように利用し,実物体の色や質感などの見かけを操作する研究が存在する.プロジェクタカメラ系を使って動的な対象表面の見かけを制御する場合,対象の反射率をピクセルごとに推定する必要がある.従来の反射率推定手法はプロジェクション以外の光(環境光)が一定であることを前提としている.よって,環境光が変化するたびにキャリブレーションし直す必要がある.しかし,環境光は刻一刻と変化するものであるため,このシステムの実応用を考えると現実的ではない.そこで我々は見かけ制御の基盤技術として環境光が変化する状況でも適用できる,環境光変化にロバストな反射率推定手法を確立した.その結果,環境光が変化しても安定して反射率を推定し,対象を一定の見かけに制御し続けることが可能となった.
左の動画では,実際に写真の見かけをプロジェクションにより変化させ,環境光の影響をキャンセルする様子がご覧いただけます.